春日部 一般社団法人らしえる

障害の生きづらさを考える <行動援護>

<ニュース インクルーシブな楽校づくりのために>

不登校を経験した過去の自分を胸に 
葉山町長がめざすいろんな選択肢
2024年4月9日 朝日新聞 芳垣文子


全ての子どもが一緒に学ぶ教育に取り組む大阪市立大空小学校初代校長の木村泰子さんを招いたシンポジウム「インクルーシブな楽校(がっこう)づくりのために」が3月、神奈川県葉山町で開かれた

                                          

インクルーシブ(包摂的)教育に力を入れる葉山町が、町全体で一緒に考えようと企画し、教職員や地域住民ら約200人が熱心に耳を傾けた


大空小は学校と地域が協力しながら、不登校や発達障害など特別な支援が必要な子も、そうでない子も、みんなが同じ教室で学ぶことで知られる
木村さんは初代校長を2006年から9年間務め、同校に密着したドキュメンタリー映画「みんなの学校」(14年)は大きな話題を呼んだ
シンポジウムの前に上映されたこの映画では、教室を出ていく子を教員が追いかける場面や、友達に暴力をふるってしまう男児の姿も出てくる 児童にきつい言葉を投げかけた教員を木村さんが厳しく戒める姿を含め、ありのままが記録されている

            

「自分は大空小で大きく変えてもらった」と木村さん いじめられたり、不登校のレッテルを貼られたりして困っている子どもたちに接して、「子どもを変えることではなく、大人が変わることがスタートだった
教師の仕事は子どもを教えるプロではなく、学びのプロになること」と振り返った
意識の変化で、暴れてしまう子どもへの声かけは、「暴れるな」「迷惑やで」ではなく、「大丈夫か」「何困ってるん」「私にできることあるか」に変わっていったという


「地域住民は変わらない」
会場から「いまの大空小はどうなっていますか?」と質問が寄せられたが、木村さんは「全ての子どもの学習権を保障する学校をつくる」ことだけ引き継いだ後は、大空小に行っていないという
理由は「過去の人間が、奮闘している今の場所に行っても何の役にも立たない 1秒先の未来は変えられるが、過去を引きずったら何もいいことはない」から
一方で、教職員や児童が入れ替わっても地域住民は変わらないことに触れ、「土と同じで耕し続けられる」「葉山で生きている全ての子どもの学びを保障する学校をつくること 全ての人が、葉山の学校をつくる当事者になることが大事」と強調した


約1時間半のシンポジウムの様子は町のホームページの「催し・行事」からアクセスでき、4月30日まで公開されている(https://www.town.hayama.lg.jp/event/14824.html別ウインドウで開きます)


この日、山梨崇仁町長(47)が、町の教員や教育長らと一緒にパネリストとして登壇した
町民らを前に「自分も過去に学校に行けなかった時期があった」と明かし、「(木村)泰子先生のような人があの時いたらとすごく思いました」と語った



木村泰子
「すべての子どもの学習権を保障する」という理念のもと、教職員や地域の人たちの協力で設立された大阪市立大空小学校の初代校長。2015年春 45年間の教職歴をもって退職。現在は、全国各地で講演活動を行う。著書『「みんなの学校」が教えてくれたこと』、



山梨崇仁(葉山町長)
ウィンドサーフィン 2000年3月の全日本学生選手権で団体・個人部門で総合優勝。2003年のオリンピック最終選考までアテネ目指していた
町長就任後、町職員組合に対し、(1)初任給の引き下げ、(2)定期昇給の1年間見送り、(3)職員給与の平均2.5%の定率削減を申し入れ、
交渉の結果いずれも実現した

<ニュース 介護施設人手不足 スキマ時間お手伝い>

求む!介護のスケッター… マッチングで人手不足を解消 
施設とボランティアをつなぐサービスの活用広がる
2024年4月14日 東京新聞 出田阿生


スキマ時間を使って、介護施設でお手伝いをしてもらえませんか
人手不足に悩む介護事業所と、有償ボランティアをインターネットで結ぶマッチングサービスがある。その名も、「助っ人」転じて「スケッター」
若手経営者が発案し、首都圏を中心に利用する施設や人を増やしている


◆専門職でなくても「有償」ボランティア
「介護の現場では、資格が必要な専門職でなくてもできる仕事がある そこに可能性を見いだした」と語るのは、サービスを提供する株式会社プラスロボ(東京都港区)の最高経営責任者(CEO)鈴木亮平さん(31)
介護業界に関心があり、大学卒業後に介護ロボットの販売代理店を1年やってみたが「ケアの仕事は生産性や効率化と相いれない 結局は人手が必要だと痛感した」という
高齢化で介護職員の需要は急増し、人手不足は深刻だ 
2019年と比べて25年は介護職員の需要が32万人増加すると、厚生労働省は試算する そこで介護以外の分野で、食事の配膳や片付け、話し相手やイベントの手伝いなど、無資格・未経験でもできる業務があることに着目した

          

◆全国で延べ5000人が登録
ネット上で家事や買い物代行を募集するマッチングサービスにヒントを得て、19年からスケッターのサイトを開設した 現在、全国で延べ約5000人の有償ボランティアが登録 介護事業所が募集を出し、スケッターとして登録した人の希望とマッチングする
スケッターはレクリエーションの時間に音楽を演奏したり体操や書道を教えたりするなど、特技も生かせる
介護事業所を紹介する交流サイト(SNS)の発信や動画編集も活躍が期待できる分野だ
介護事業所はシステム利用料のほか、交通費込みの謝礼をボランティアに支払う 時給の最低価格は500円以上と規定
1時間1000円程度のところが多いという 生計を立てられる報酬ではないだけに「おしょうゆの貸し借りのような助け合い精神でやっていただけたら」と鈴木さんは話す


◆ボランティア自身の社会参加にも
これまでに、長野県内の社会福祉協議会や東京都中野区と協定を締結した 茨城県大子町では「登録してくれているのは大半が元気な高齢者」で、ボランティア自身の健康促進や社会参加に役立てる目標がある
若者の職場体験に生かせることもあり、登録者は10~30代が約6割を占める
大阪府や広島県では大学と提携し、福祉を学ぶ学生の体験学習に活用する 川崎市ではハローワークと連携している


(協定書を交わしたプラスロボの鈴木亮平さん(右)と奥ノ木信夫市長=埼玉県川口市で)
課題は認知度の向上だ 方策として、埼玉県川口市では今年7~9月の3カ月間、介護事業所がマッチングを無料で試用できる期間を設け、サービス自体の周知などをしていくという
数カ月前から、川口市でサービスを利用している有料老人ホームの担当者は「洗い物の仕事などをやってもらって職員は助かっている 毎回初めてのボランティアが来ることが当初は懸念材料だったが、簡単な指示でやってもらえると分かって安心した 今後はレクリエーションの講師も来てもらえたらと願っている」と話す