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介護助手 専門職の負担軽く 
人間関係も改善
2024年4月12日  東京新聞 川合道子


介護現場の人材不足が深刻化する中、介護施設で「介護助手」などとして働く元気なシニアが注目されている 介護の資格や経験がなくてもできる食事の配膳や片付けといった補助的な業務を担う 介護福祉士ら専門職の負担軽減や離職防止につながるとして期待されている
3月下旬、津市の介護老人保健施設「いこいの森」 近くに住む介護助手の田中恵美さん(75)が、利用者の名前が書かれたペットボトルやカップにお茶を補充し、各部屋に配っていた 食事の片付けやテーブル拭き、入浴時の着替えの準備なども担当し、勤務は土日を含め週4日、3~6時間 「利用者や若い職員とのコミュニケーションが楽しくて、もっと働きたいくらい 仕事中に7千歩は歩くので、健康維持にもなる」と笑顔を見せた


三重県老人保健施設協会(老健協)は2015年度、県の基金を活用したモデル事業で、地域の元気な高齢者に「介護助手」として活躍してもらう取り組みを始めた

同施設を運営する医療法人「緑の風」では初年度に7人を採用 現在は入所と通所の利用者計約160人に対し、主に60~70代の介護助手37人が働く
大半は近隣に住む主婦の女性で、男性も通所施設の運転手などとして勤務 希望が多い「1日3時間、週3日」の働き方だと月に4万円程度の収入になる
取り組みは、同法人理事長で全国老健協の東憲太郎会長が提案 医師として診療所で地域の高齢者と向き合う中「退職してすることがない」「外に出て何かしたい」などの声にヒントを得た


施設では当時、専門職が本来のケア以外の業務に追われて疲弊していた
専門職が抱えていた業務を細分化 介護助手はそれぞれの体力などに合わせ、シーツ交換や物品補充、利用者の話し相手といった周辺の業務を担う 食事やトイレの介助など身体介護はしない オレンジ色のエプロンを着けひと目で分かるようにしている
介護福祉士の荒木芳枝介護長は「専門職の残業が減り、休みが取りやすくなった ゆとりが生まれ、利用者に一対一で向き合う時間が増えた」と話す

        

三重県の取り組みをきっかけに、シニアを介護助手に活用する動きは各地に 全国老健協の会員施設を対象にした20年度の調査では1100カ所以上が60歳以上の介護助手を採用する
東京都健康長寿医療センター研究所の藤原佳典副所長は、この調査で介護職の2割が「職員間の人間関係が良好になっている」と回答した
「介護職が離職する原因の一つは人間関係 
年の離れたシニアに悩みや愚痴を聞いてもらうことで、精神的な負担の軽減にもつながっているのでは」と指摘する 藤原副所長らの研究では、介護助手が多い施設ほど介護職がバーンアウト(燃え尽き症候群)となるリスクが減ることも明らかに 「自身の健康だけでなく、職員や利用者の役に立ち、地域貢献にもなる『三方良し』の仕事」と評価する
派遣大手のスタッフサービス(東京)では、23年夏から派遣先となる施設に対し、業務を細分化した求人募集の提案を開始 施設側と高齢者側のニーズなどを聞き取りながら両者のマッチングを進める
都内の有料老人ホームで働く元保険会社営業職の山内康子さん(73)は「多くの人と接してきた経験が生かせる 地元の施設について知るきっかけにもなった」と喜ぶ
同社の平井真執行役員は「それぞれに合った仕事を創出することでチャレンジする人を増やし、介護業界の人手不足を解消していきたい」と話した