春日部 一般社団法人らしえる

障害の生きづらさを考える <行動援護>

<ニュース 後見制度 現行の制度では>

成年後見制度
認知症になった人の権利を守れない
2024年04月06日 Yahoo!ニュース


成年後見制度ができて四半世紀 数々の問題が指摘されてきたこの制度に、やっと見直しの動きが出てきた


成年後見制度とは、認知症や知的障害、精神障害などが理由で判断能力が低下した人の財産管理などを代理人が行う仕組みで、2000年にスタートした
成年後見人になるためには特別な資格は必要なく、家族のほか、弁護士や司法書士、行政書士などがなる場合が多い
また、その報酬は基本的には被後見人となる本人が負担する

認知症によって判断能力が衰える人が増加し、後見制度の必要性が高まる一方で、現行の制度は課題が多く利用しにくいことが指摘されてきた
今年2月に法務大臣が見直しを法制審に諮問したのを受けて、今月から審議が始まる


成年後見制度は、明治時代から続いてきた民法の禁治産制度を改正して2000年に始まった 禁治産は、判断能力がないとされた人に対して様々な行為を制限するもので、裁判所から禁治産者の宣告を受けると財産の管理能力がないとされ選挙権も与えられなかった 同年にスタートした介護保険が、サービスの利用を行政が措置する制度から、利用者が契約する制度と変わるのに合わせて、同様の考え方で現行の成年後見制度が作られたという経緯がある
しかし、例えば遺産分割などで認知症の当事者に一度後見人をつけると、亡くなるまで利用をやめることができないほか、その後の介護サービスの利用などについても後見人の判断が求められるなど、非常に煩雑で使い勝手が悪い制度となっていた
さらに、成年後見人には包括的な取消権、代理権が与えられ、被後見人の意思がまったく考慮されなくなる問題も指摘されていた
一昨年、国連は、障害者権利委員会の総括所見として「意思決定を代行する制度を廃止する」観点から民法の改正を日本政府に勧告している


弁護士で2月まで全国権利擁護支援ネットワークの代表を務めていた佐藤彰一氏は、判断能力の有無を他者が決めることができないという理由から、判断能力がないことを前提とするのではなく、「能力存在推定」を前提に被後見人の意思決定を支援する制度を考えるべきだと主張する
そのためには、被後見人の意思決定をどう支援するかが重要となる。
しかし、本人の意思をどう引き出すかや、状況や環境によって変化する本人の意思をどう捉えるべきかは簡単な問題ではない そのためには被後見人の生活歴や暮らしぶりなどがある程度わかっていることが重要で、地域や暮らしの視点が求められる
佐藤氏は司法書士や弁護士といった第三者の成年後見人にその役割まで求めるのは困難だと語る


今回の見直しの議論のなかで、後見人が本人に代わって意思決定をする現行制度から被後見人の意思決定を支援するという形に180度転換することができるのか、法改正も必要だが生活支援や地域づくりこそが重要だと主張する

佐藤彰一 (さとう しょういち)
弁護士、全国権利擁護支援ネットワーク顧問
1953年福岡県生まれ。76年立命館大学法学部卒業。82年同大学大学院法学研究科博士後期課程修了。2000年弁護士登録。12年佐藤彰一法律事務所(現PAC法律事務所)を設立し代表に就任。立教大学教授、法政大学教授を経て12年より国学院大学法学部教授。24年3月退官。24年2月まで全国権利擁護支援ネットワーク代表。編著に『権利擁護がわかる意思決定支援』。



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成年後見人の一時利用可能に
法制審に諮問 現在は終身
2024年2月13日 日本経済新聞社


小泉龍司法相は13日の記者会見で、認知症などの人に代わって財産管理を担う成年後見制度の見直しを15日の法制審議会(法相の諮問機関)総会へ諮問すると表明した


一度選任すると原則として亡くなるまで利用をやめられない現行制度を改め、期間限定で選任できる仕組みなどを検討する
法制審での議論を踏まえ、2026年度までに民法などの関連法改正を目指す
成年後見制度は判断能力が不十分な人に代わって後見人が預貯金の管理や契約を支援するもの
悪徳商法から保護する目的もある。親族のほか司法書士や社会福祉士、弁護士といった専門家が後見人に就く
いまは判断能力が回復しない限りは利用をやめることができない
後見人の著しい不正がない限りは解任もしにくい。専門家を後見人にする場合は毎月数万円の報酬を払わなければならず負担が重いとの指摘を踏まえて見直しを検討する


後見人が支援する行為の範囲を限定することも論点となる
いまは日常的な買い物や旅行から財産管理まで包括的な活動が対象となる
必要とする支援の範囲を事前に定めたり、状況によって後見人を交代できたりする制度を導入する案がある
例えば、日常的な行為は本人の決定に任せつつ、財産管理のときは弁護士、福祉施設へ入居する際は社会福祉士に依頼するといった形だ
厚生労働省によると成年後見制度の利用者数は2022年末時点で25万人ほど。認知症患者が25年には推計700万人以上になるのと比べて利用が広がっていない

            

認知症患者は今後も増えていく見通しで、政府は成年後見制度の普及を急ぐ
利用するための経済的な負担を減らし、柔軟に選任できるようにする方向で制度の使いやすさ改善を探る
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